1/3
前へ
/20ページ
次へ

 荒川の河川敷の夕日を受けて、四人は芝生にいた。  川面をわたる風が心地よい。  カモメが過ぎ去り、白い鳩が、舞い降りてきた。スズメも一緒だ。  美景は言う。  「先生の心は、化石発掘ばかりではなかったの。失った仕事やあたたかい家庭といった過去への憧れ。実は、あのスマホは、養育費を途中で支払うのをやめた先生の父親が、自分のところに来い、と渡したものだったのよ」  稜弥は言う。  「そのスマホをベランダのパセリのプランターに埋めていたんだなあ。あんなところに。もしかしたら、悲しみの象徴かな」  「そうかもな」ジェラルドは言う。「化石収集家が、自分で過去を化石にしようとした」  「あの母親のところに、使い魔の六匹を忘れてきた」  スタイロンが、つぶやく。  「いいんじゃないか?」と、ジェラルドが、笑い噴き出す。「どう思う? 稜弥?」  「もう一回あそこに行くなら、怒りますよ」と稜弥。  「稜弥くん!」と美景が叱る。  「いや、正直に言って、マルチ・レベルなんとかとか、新興宗教には、ぜんぜん興味がなくってさあ。ちんぷんかんぷん。美景さん」  ジェラルドとスタイロンは、ふうと、ため息をついて、立ち上がった。  「戦士団(カウンター・パーティー)を一度組んだ者同士は、フルネームと所属を明らかにしておくことだ」  ジェラルドが言う。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加