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「これもジンクスでね。改めて。一通り見たように格納能力使いのデリック・ジェラルドだ。古代から続くからこそ、ジンクスを破らないなら予想外のトラブルには巻き込まれないと信じて大切にしている。はた迷惑かもしれないが。秘密結社フリーメーソンのウォール街支部に所属している。質量を何トンでも無効化し、体積も無視して体に埋め込むことができる。取り出すときも、体内が異空間のようなもので、服を少しどけるだけで取り出せる」
スタイロンは、「こちらにはそんな提案には乗る理由がないが、戦友として敬意を払おう。エクソシストのレイモンド・スタイロンだ。由緒あるイングランド紳士階級の出だ。今となっては、当家は落ちぶれてしまったが。東京大学大学院に留学中だ。以前はオックスフォード大にいた。バチカンの組織、『わるわりを機関』の所属だ。エクソシストの時は悪魔に聖句呪詛、あとは見たとおり。悪魔や怨霊を使役する。合わせ鏡に封じておいたものを、シンボルが刻まれたレンズで召喚し、回収には、そのレンズと凹面鏡を使う」
美景は、一礼して続いた。
「わたしは嶋原美景。井上円了怪奇研究倶楽部所属。東洋大生。オブジェクト・リーダーで、霊障色観者」
「こっちは、森川稜弥。九鬼神伝天真兵法の左伝。棒術と、ナギナタが得意。発火能力者で、所属は……」
稜弥は、実のところ無関係者だ。ザラに放置された能力者の一人だ。
自分でも、言い出して困る。
「わたしの彼氏ってことにしていい? はじめて、私を名前で呼んでくれたもの」美景は助け舟を出す。
稜弥は慌てふためく。
「まあ、そういうことでいいのかもな。じゃあ、さらばだ。また顔合わせたら頼むぜ」ジェラルドは、ハーレーに跨がり、イグニッションを入れる。
「ほう、その所属には全く興味がないわけでもない」と、スタイロンは、とっておいたクローバーの一本を美景に渡した。
四つ葉のクローバーだった。
「グッド・ラック!」
スタイロンは、振り向きもせず去った。
ジェラルドも、親指を立てて、エンジンを噴かせて去った。ハーレーの爆音はみるみる遠くに行き、スタイロンをすぐに追い越して、消えていく。
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