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 「嶋原さんには、霊能の才能があったのか。こっちにも実は……」と、ジェラルドのマルボロを一本抜き、指を当てると、ライターを使わずとも、火が点いた。  「こんなことをする力がある。もっと派手にやることもできる」  美景は驚いた。  「手品ではないわよね」  「もちろん。うちの兵法にはこういう力以外にもいろいろな使い手が古文書に記録されているって、じっちゃんが言っていた」  スタイロンが二人のやりとりに、コメントし始める。  「この国に、まともな組織が手を出していないのは、なぜか? 実は巧妙に組織自体の存在を秘匿している。世界最古の系譜を持つエンペラーの国だから、なかなか手を出せない。秘匿が最優先で、力の使い手はザラに放置されている」と説明する。  そして、「美景、我々は、あなたの能力を残留思念読み(オブジェクト・リーダー)と呼ぶ。それから光を見る力は霊障色観者(マター・カラード・ビューワー)という。稜弥の力は発火能力者(ファイヤスターター)と呼ぶ。だいたいの国では組織に囲われて、表舞台には出されないで、きちんと保護される。そういう存在をみて、モノマネしようと、力のない者が編み出したのが、手品だ。手品を名乗ることで、本当の能力を秘匿することをする者もいる」  ジェラルドは、話を続けさせようと、話題を戻す。  「荒川の橋の周辺をバイクで走っていたら、荒川土手のバス停のところに違和感があった。上流や下流には、鳥が多かったのに、あの橋のあたりには見かけない。これは、ちょっとした事象(ヤマ)だろうな。あんたらには初の経験だろうが、俺は協力する」  スタイロンも頷く。  「こちらも協力しよう」  美景と稜弥は顔を見合わせると、稜弥が訊いた。  「協力するとか、ヤマだとか、一体何をこれからするのだか、話がさっぱり」  ジェラルドは、「戦士団(カウンター・パーティー)を結成するのだ。まずはな。稜弥も美景も協力しあおう。やることはそれから教える。ただし、命がけだが」と手を差し出す。  美景も稜弥もスタイロンも手を差し出すが、ジェラルドの手は左手だった。皆が戸惑って、手を変えて差し出す。  「悪いな。ちょっとしたジンクスでね。験担ぎだ」ジェラルドは、ポツリという。  四人が左手で握手しあった。
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