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 「息子は子供の頃から頭が良かったのよ。車に乗っていると、あれはカローラだとか、言い当てて。昨日のことのよう。息子の部屋は片付けないで、そのままよ」  稜弥はグラスに手を伸ばし、「うまいなあ」とつぶやく。  「あら、よくわかりますわね。このお水は特別なのよ」  美鈴は得意げではなく、宗教家のように神妙な面持ちになった。  「最近は、この浄水器は人気なのよ。このお水が気に入ったのならうまく事業が進むわね。『成功者』になりますわ」  稜弥は対面式キッチンの中へ招かれた。色々と詳細な説明をうけている。ずいぶん気に入られたのか、三人の方に美鈴は自分の身内であるかのように、「稜弥くんは、見所があるわ」と、褒めちぎる。  ジェラルドが言う。  「われわれも、いろいろ見てもいいですか?」  「わたしたちも、いろいろ拝見させていただきたいと思います。稜弥くんにはお母さまの説明を詳しくお話ください。事業のこととか、あとで稜弥くんにお聞きします」  美景が申し出ると、美鈴は頷く。  「いいわよ。家の中にはいいものがたくさんありますから、遠慮なくご覧になって」  三人、美景とジェラルドとスタイロンは目を送った。  すかさず、甲野和史の部屋に向かう。美鈴は、稜弥への説明にかかりきりだ。  稜弥の困り果てた顔が見物だった。
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