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「あら、君たち新入生? 学校は明日からなのに入部希望なの!?」
女性監督は嬉しそうに話し出した。
翔也たちは、草陰から姿を現し、女性監督の前に近づいた。
「あ、いや、その……。少し聞きたいのですが、野球部の監督ってあなたですか……?」
「そうよ。私が北燕高校野球部の監督を務めている北燕高校教師、数学担当の前園夏実よ」
「それは本当ですか?」
「本当よ。部員は御覧の通り、四人だけよ。さっきあなた達が話していたでしょ?」
「き、聞いていたんですか……?」
翔也たちは青ざめながら、自分たちが陰で噂していたこと聞かれていたと確信した。
「お、俺。西之浦中から来ました。古矢一成。ポ、ポジションはキャッチャーです」
緊張して自己紹介を始めた一成は、体が固まっていた。
「それで、そっちの君は?」
「埼玉の方から来ました。柿谷翔也です。ポジションはピッチャーです。よろしくお願いします」
「ああ、君が県外から受験した生徒ね。噂耳にしているわ。珍しいわね。親御さんの転勤かな?」
「まあ、そんなところです……」
翔也は苦笑いをしながら、軽く頭を下げて言った。
「そうか。君たち野球部に入ってくれるんだ。良かったよ。ウチ、試合ができる人数がいないからさ。入部してくれれば、残りは後四人で今年も試合に出られるのよ」
その声に圧倒されたように、翔也たちはびっくりして目を大きくした。距離が近くなるほど彼女が物凄く興奮しているのがよく分かる。
「それでさ。今日は君たちも練習に参加してみる? グラウンドはちゃんとあるから……」
夏実がそう言うと、翔也と一成はお互いの顔を見合わせて小さく頷くと、はい! と大きく返事を返した。
「じゃあ、グラブとバットはちゃんと持ってきてあるのね」
「夏ミカン。いつまで話しているの? 早くしないと時間、無くなっちゃうよ!」
上から呼んでくる野球部員は、前園夏実の事を『夏ミカン』と明らかに呼んでいた。彼女のあだ名かもしれない。教師にあだ名をつけるなどこの野球部はどうかしていると翔也は思った。
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