第1章  二十年連続初戦敗退の弱小校

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「じゃあ、俺達も手伝った方がいいですか? まだ、入部はしていないんですけど大丈夫ですよね?」 「お願いするわ。さすがに五人はきついからさ……」  夏実(なつみ)がお願いすると、二人は野球の道具をグラウンドの隅っこの場所にある野球部が練習している場所まで運んだ。 「それじゃあ、練習でもしようか。と、言いたいところだけど……柿谷(かきたに)君と古矢(ふるや)君。君たち二人の実力が見たいから二人でバッテリーを組んでもらえる?」 「組むって、俺たち二人がですか?」  一成(かずなり)が驚きながら自分と翔也(しょうや)を交互に指さす。それを見て夏実は大きく頷いた。 「そう、まずは今、現在でどれくらいの実力を発揮させられるのかが重要なの。それから今後の事を考えて、今年は甲子園優勝を目指すのよ?」  そう言って、わくわくしながら夏実はヘルメットとバットを用意している。  翔也と一成は、それぞれ準備を始めた。一成はプロテクターとレガースを装着し、マスクをかぶると、ミットをはめてキャッチャーボックスに向かった。  翔也は一度、自分のバックからグラブを取り出して帽子をかぶり直し、マウンドへと歩き出した。軟式とは違う硬球のボールをかごから一番よさそうなのを選んでいた。  さて、バッテリーを組むのはいいとして……こいつどれだけの能力を持っているんだろう。  マウンドに立ち、ミットを構えた一成を見ながら、翔也はそう思った。  いきなり今日初めて会った相手とバッテリーを組んだことは一度もない。どういうリードをしてくるのか興味がある。  キャッチャーをする選手のほとんどが、頭のいい人間がしている。野球だけ覚えていても意味がないのだ。相手をしっかりと分析し、それを記憶する。戦術を組み立て、ピッチャーがバッターに勝てる所へと導くのが役目である。  さて、俺は軽く肩を作りたいんだが、どこへ投げればいいのかな?  すると、一成はマスクを外して立ち上がり、 「すみません。彼と少し話してもいいですか?」  そう言って、一成はマウンドへと歩み寄った。
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