4人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも、私は違うわ。大学まで現役バリバリの野球少女だったのよ。でも、女子ってその先がないでしょ? だったら、本気で野球ができる高校教師になって初の甲子園出場の女監督になりたいの。そして、目指すは甲子園優勝、全国制覇よ!」
「それを今年やり遂げるつもりですか?」
凄まじいオーラを放つ夏実に対して、苦笑いをしながら訊く。
「でも、俺一人では勝てないと思いますよ。せめてもう一人、コントロールのいい変化球を多彩に持った選手がいれば別ですけど……」
「確かにそれは一理ある。でも、それは逆に言えば今からそんな凄い選手がこんな高校に来るとは思えないということ」
鋭い所を夏実が言う。
「俺も翔也や夏ミカンの意見はまともだと思いますよ。だったら、こいつのコントロールとスピードをこの四ヶ月でマスターすればいい事じゃないんですか?」
「お、おい。一成……」
マウンドまで来て翔也の背中を押し、夏実に向かって言った。
「それじゃあ、こいつの球で勝負してくれませんか? こいつがどれだけの球かを肌で実感してほしいんで……」
「そのつもりだよ。打者がいないと本当の実力は分からない。いくらブルペンとかでピッチング練習をしたとしても本番でその実力がはっきりと出せなかったら意味が無いからね!」
ふふふ、と笑いながら夏実は楽しそうにしていた。
俺の球と勝負するのかよ……。勝ち目が見えているのに?
余裕そうな表情で翔也は隠れて小さく笑った。だが、それはまだ彼女の事を格下だと思っていた時だったのだ。
だが、それを一成は見逃さずに黙ってみていた。
「じゃあ、私と三打席勝負ね。一度でも私にヒットやホームランを打たれたら君たちの負け」
「じゃあ、それでお願いします」
一成はすんなりと受け入れた。打たれたら自分たちの負け、逆に抑えたら自分たちの勝ち。シンプルで分かりやすい勝負だ。
最初のコメントを投稿しよう!