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「うん。今のは完璧に打ち取られていたね。ショートゴロって言ったところかな?」
夏実が少し悔しそうな顔をしていた。
一成が、夏実のスイングフォームを見た後に難しい顔をしていた。
これは俺のリードを完璧に呼んでいたから打てたことだ……。残り二打席、やばい!
「すみません。タイムをとってもいいですか?」
「いいよ。私を残り二打席で打ち取る気でしょ?」
夏実が余裕そうに笑った。
その笑みを見ながらマウンドに向かう。マスクを外して口をミットで隠すように覆った。
あの様子じゃ、次は確実に芯を狙って売ってくるな……。
そして、翔也もグローブで口を隠し、一成と話を始めた。
「すまない。さっきの俺のリードを読まれていたらしい。たぶんだが、あの人は相当感がいいんだろう。まさか、カーブを狙っていたとは思わなかった……」
「なんだよ。謝る気か? 俺もあのリードで行けると思ったから投げたんだろ? だから、一打席目は勝った。焦らずに行こうぜ!」
「そうだな。イヤな時は、首を振れよ」
「ああ、任せろ。俺の球とお前のリードは負けない!」
そう言って、一成が戻る背中を見て息を吐いた。 二打席目、一球目からど真ん中に早いストレートを投げる――――夏実は迷いもなく振ってきた。
またも夏実はボールをバットに当てて、ファースト方面に転がり、ファールゾーンに切れる。二球目は見逃し、バッテリーはツーナッシングで追い込んだ。
よし。ここまでは完璧に追い込んでいる……。
一成は三球勝負でインコースに構えた。
これで終わりだ!
翔也は、ボールを握り、腕を大きく振りかぶって一成が構えているキャッチャーミットに目掛けて投げる。
だが、夏実はバットを短く持ってコンパクトにスイングをした。打球は宙に浮かび、センター前に落ちた。
何……? 今の完璧に抑えたはずだ!
一成はマスクを外し、ポカン、とその場に棒立ちになり驚いていた。
「これはヒットだね。明らかに一塁に立っている自信がある。この勝負、私の勝ちだね」
バットを地面に置き、ヘルメットを外すと、夏実は翔也の方を見て言った。一成が夏実を見た。
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