第1章  二十年連続初戦敗退の弱小校

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 妹の手を引っ張りながら階段を上り、橋を渡り、また階段を下りた後、改札口を抜けると、行きかう人々でいっぱいだった。すると、目の前の停車場で見覚えのある車から母の佑理が出てきた。翔也の荷物を受け取り、車の荷物入れにいれる。 「よかった。無事にたどり着いたようね。長旅、疲れたよね」 「ああ、飛行機を経由して、電車に乗った後が長かったよ。予定よりも十分以上遅れたんだぜ。田舎はこんなことがよくあるの?」  話しながら、荷物を車に積み込んだ後、後部座席に座った。  運転は父親がハンドルを握って、発進させる。駅から七分程度の川沿いにある家の前に停まった。車から降りると、長年使っていたような木造建築の一軒家だ。 「ここは母さんの知り合いが大家をしている家で、中古で買い取ったのよ。すごいでしょ!」  自慢げに言う佑理が翔也の様子を見る。 「へぇ、母さんにしてはすごいね。未だに古い友人と交流があるんだ」  翔也が関心下口調でそう言った。  まあ、川も近いし、学校も近いからいいか……。  佑理が買った家は、二階建ての一軒家で裏には広い庭がついている。開拓さえすれば何でもできそうな広さだ。目の前には川があり、そこには小さなグランドみたいな場所がポツン、とある。  ここで新たな高校生活が始まろうとすると、ドキドキしてたまらない。 「まあ、それよりも俺は疲れたよ。父さんもありがとうね。仕事があるんじゃなかったの?」 「今日は仕事が休みだったんだよ。気にするな……」  父の正義が腕を組みながら笑い、翔也の隣に立つ。翔也が苦笑いをしながら顔が引きずっていた。  家の中は春先中に両親が色々と片付けしていたらしく、翔也の荷物だけだった。玄関に自分の荷物を置くと、床に大の字になって寝そべった。  台所に行き、旅疲れでお腹が空いていた。テーブルには、おにぎりと目玉焼き、ウインナーなどが皿の上に載っていた。  両親は、翔也と紗耶香よりも先に宮崎に来ていた。父親の仕事の都合で三月中旬からこちらに転勤している。翔也は、中学卒業後、春休みの間は埼玉の方で二、三週間程度友達の家や親せきの家に泊まって十分に遊んでいた。そして、時間は迫り、荷物をまとめて一人、埼玉から南の宮崎県延岡市で新たな生活がスタートする。
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