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弱小だか何だかどうでもいい……野球ができれば勝つのはそれからだ……。
晩御飯を食べ終わった後、風呂に入り、テレビを見た。宮崎にはテレビ局が二つしかない事に翔也は驚いた。
四月十三日――――
「ここが北燕高校か……。坂が急で長いな。ここを三年間昇らないといけないのか」
佑理の地図を元に春休み中の高校を訪問していた。翔也は自転車をおしながら坂を上ると、右手には校舎、左手には無駄のように広いグラウンドが見えた。
サッカー部や陸上部、テニス部やハンドボール部が春休み中にも関わらずに朝から練習をしていた。
へぇー、田舎の高校になると敷地面積は広いんだな……これだと、移動するにも大変そうだし、畑でも作れるんじゃないか?
校門から再び自転車に乗り、駐輪場の場所を探した。四月になり、桜の花びらが翔也の頭上で舞っている。小さな坂を上り、各部活の部室が見え、その先に駐輪場が見えた。
ガタンッ!
うん……?
何か駐輪場の奥で物音が聞こえた。あまりにも広い駐輪場は多くの自転車で埋まっており、少年が奥にいた。屋根で日影になっており、その下でイヤホンをしながらスマホ画面で何かをしている。
何をしているんだ……?
疑問に思いながら、翔也はその少年に近づいた。
少年は夢中になりながらリズムゲームをしていた。両手の親指が光速に動いているかのように次々と左右に動かしている。少年の姿は白いユニフォーム姿で白帽子の鍔を後ろ向きにしていた。野球部だ。
翔也は、後ろの柵から少年の肩を軽く叩いた。
「ねぇ、もしかして野球部員?」
「はぁ……?」
少年はイヤホンを外して迷惑そうな顔をしていた。楽しそうにゲームをしていた表情とは一変して、翔也は少し苦笑いをする。
「お前、誰だ? 見ない顔だけど……」
「俺は柿谷翔也。今年から北燕高校に入学する新入生だけど……」
「そうか。俺も同じ一年なんだ。名前は古矢一成。一応、中学校では捕手をしていた」
一成が急に明るく話し出した。
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