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「それで、何科のお医者さんになったのよ?」 「呼吸器内科。父の大学での同級生が教授になってて、その縁でね。卒業後2年間の研修期間が終わったら自分で好きな医局を選べるはずだったんだけど、気がついたら『中嶌は呼吸器』って教授に決められちゃってて」  まぁ、うちの病院じゃ内科もやってるからそれで問題無いんだけどさ、と彼は若干不満が残るような顔をしつつも微笑んだ。  卒業後は実家の病院で働くものだとばかり思っていたが、話を聞いていると、どうやら医師免許を得ただけでは医師として使い物にならないらしく、半人前の間は医局に所属し、大学病院や全国のいろんな病院で修行しなくてはいけないそうだ。 「濱浦市民病院にはうちの大学から医者が派遣されていて、この前、先輩が戻ってきたから、今度はお前が行ってこいって言われて」  任期は2年間。半人前だから、教授命令を前に文句も言えないまま飛ばされてきた、とのこと。転勤の話を聞かされたのが、赴任のわずか2週間前だったというから、本当に下っ端扱いらしい。 「へぇ。28にもなってまだ半人前なの?」 「これでもストレートでここまで来ているから、早い方だよ。28でまだ学生の人もざらにいるし」     
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