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 体の奥底から湧いてきた甘酸っぱい想いを打ち消そうと、杏菜は心の中で大いに悪態をついた。  恐らく天然の女ったらしなのだ。計算づくでこういう事を言う男ならいくらでもいるが、泰生の場合は純粋に思ったことを口にしているのだから始末が悪い。こんな優しい言葉をかけられれば、どんな女性だってころりと参ってしまうだろう。あぁもう、世の女性が無駄な失恋に涙するのを防いだという点では、この男が今まで女性と関わりなく暮らしてくれていたのは、良いことだったのかもしれない。 「あ、ホットドッグを売ってるよ」  道の先に見えたログハウス風の売店を指さし、泰生が弾んだ声を上げた。いくつかベンチも置かれた広場になっていて、どうやら休憩スポットらしい。店の前にはホットドッグのイラストが大きく描かれたのぼりが立っていた。  食べようか、と誘ってきた彼は「また半分こにしようよ」と、悪戯っぽい目をして言った。     
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