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 そういえば10年前の散歩の折には、1本のホットドッグを二人で分けて食べた。仕事中だから飲食はちょっと、と遠慮する杏菜に『じゃあ、一人でホットドッグの1本も食べきれない可哀想なクライアントの息子を助けてあげるってことにしてよ』と、泰生が屁理屈をこねたからだ。先日の話によると、一緒にホットドッグを食べることを予め計画していたそうだから、そこは絶対に外せなかったのだろう。 「うーん、今日は仕事じゃないから、一人で1本全部食べたいなぁ」 「食べきれるかな?」  泰生はにやにや笑いながらメニュー表を指さした。そこに載っていたのは、なんと特大35cmのホットドッグ。杏菜は思わず噴き出してしまった。 「ヤダもう。もしかして、事前に調べてた?」  杏菜が問うと、彼はにっと歯を見せて笑った。さすが、下調べを怠らないまめ男君だこと。  そこで、杏菜たちは特大ホットドッグと搾りたて瓶詰め牛乳を買い、手近なベンチに並んで座った。 「いただきまーす」と弾んだ声を上げ、ここはやはり二人同時に両端からかじりついてみる。  ぱりっと音を立てて皮が弾けた途端、口いっぱいに肉汁が広がった。とても美味しい。しかも、ホットドッグの先には互いの顔が迫っているわけで、目が合うと同時に自然と笑いが込み上げてしまった。 「ヤダもう。ただ食べてるだけなのに、なんで笑っちゃうんだろうね」と言う杏菜に「僕らの世界がまた繋がったからじゃないかな?」と泰生が微笑んだ。  それは10年前、ホットドッグを食べた時に杏菜が口にした言葉だった。     
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