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『泰生くんとあたしって、住んでる世界は全然違うけどさ、それでもこうやって一緒にホットドッグを食べちゃうこともできるんだよね』  懐かしい記憶だ。確か梅雨の晴れ間で、じめじめした暑い日だった。噴水の前のベンチに座った二人の足元には、暑さと散歩にうんざりしてふて寝するコタローがいた。木漏れ日が噴水から風に乗って流れて来る水しぶきに反射して、きらきら光るのがやたらと綺麗に見えた。 『これってよく考えたらすごいことだよね。たった1本のホットドッグで世界が繋がるなんてさ』  貧乏専門学校生で学費を稼ぐべくアルバイトに追われていた杏菜と、都内でも最高峰の進学校に通い医学部を目指して猛勉強していた泰生と。お互いが身分違いのかけ離れた存在であることは当時からよく分かっていたが、そんな二人でも一緒に並んでいられるのが、あの時はとにかく嬉しかったのだ。  世界が繋がる―――そうだ、確かに今、杏菜と泰生は1本のホットドッグを挟んで同じ世界に存在している。 「……なんかさ」 「ん?」 「食べてる顔って、正面から見るとまぬけ面」  杏菜はくすくす笑った。こんなもの、食べるほどに互いの顔が近づいてくるのだし、気恥ずかしくて冗談で紛らわさないとやってられない。 「ねぇ、睨めっこしようか」 「なんでいきなり」 「だってこの状況でやったら面白そうだから」     
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