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「既に笑ってるから、杏菜さんの負けは決定だよ」 「大丈夫だって。じゃあ、勝った方がこの後どこ行くか決められるってことで」 「え?」 「泰生くんはどうしたい?」  杏菜はホットドッグの先にある泰生の目をじっと見つめた。彼の事だから多分この後も綿密に計画を立てているのだろうが、杏菜が聞いているのはそういう話じゃない。 「あたしはさ……いいよ、どこでも」 「あ……」  至近距離から挑むような目でみつめられ、彼は明らかに動揺したよう。不自然に目を泳がせた。 「……いいの?」 「いいよ。勝てたらね」  残り5cmもないホットドッグを間に挟んだまま、こんな会話を交わしているのだから、傍から見ればさぞかし滑稽な光景だろうが、やっている当人らは真剣なのだ。睨めっこにつきものの変顔をすることすら忘れ、ただ互いをじっと見つめあってしまった二人はその時、完全に周りの状況が見えていなくて、だからいつの間にかアルパカが間近へ迫っていることにも全く気付かなかった。 「痛っ?!」  泰生が突然悲鳴を上げた。牛乳瓶をひっくり返してベンチから立ち上がる。 「え?!」     
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