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「えーっと、それでは、この後はみなさんで自由に歓談していただくということでよろしいですかね」  お兄さんの仕切りはのんびりしたもので、ろくな交流の機会も作らないうちに、すぐさまフリータイムという名の放任状態になってしまった。  その直後のことだ。目を疑うような出来事が起きた。なんと、杏菜を除く女性陣全員が猛然と泰生を取り囲んだのだ。 「え……何?」  他の男性参加者らがドン引きするほどの異様な熱気が、一瞬で狭い会議室の中へ充満する。  どうやら、どうせ無料のお見合いパーティーに大した男なんて来ないよね、と半ば諦めていたところへ、ハンパ無い超優良物件が登場したものだから、みんなの中のイイ男レーダーが制御不能なレベルにまで振り切れてしまったらしい。  いやいや、落ち着こうよ、と杏菜は叫びたくなった。泰生なんて、背は高くないし、髪の毛ももっさりしていて年齢のわりに辛気臭い。イケメン要素なんてほぼゼロだ。恥も外聞もかなぐり捨ててまで狙う必要は無いのに……。 「初めまして、中嶌先生。市民病院には父も母も祖母もお世話になっているんですよ」 「そ、そうなんですか」 「母から、最近若くてカッコイイ、素敵な先生がいらっしゃったって聞いていたんですけど、それはきっと先生のことだったんですね」     
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