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「ふぅん、怖いもんだねぇ、医者の世界って。じゃあ、一体いつになったら一人前のふんぞり返ったのになれるの?」 「一人前はあと5、6年かな。ふんぞり返るのはそれから更に20年くらい? まぁ、そういうのになるつもりはないけど」 「でも、半人前でもちゃんと暮らしていけるだけのお給料をもらえるんだからいいじゃない」  とりとめもなく話しているうちに目的地へ着いた。  岩場の海岸には白い灯台があり、お昼にはまだ少し早かったから、その辺をぶらぶらと散策して時間を潰す。そして、ランチタイムになったのを見計らってホテルへ向かったのだが、これがなんと、杏菜の予想を遥かに超える高級ホテルだった。大きな獅子の彫像が出迎える豪奢な正面玄関に仰天したまま館内へ一歩足を踏み入れれば、辺りには品の良いお香が焚き染められているし、置かれた調度品はアジアンテイストで統一された、上質なものばかりで……。  ジーンズにTシャツ姿である上に、こういうところへ来慣れていない杏菜は気後れしてしまったが、その点、泰生は堂々としたもので、予約である旨をホテルの係員にさらっと伝えてレストランへ連れて行ってくれた。     
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