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崖のような下り坂を飛ぶように走る。
大きな鱗に覆われた表皮は滑りやすく、前足から頭部にかけて巨大な滑り台のようだ。空から始祖鳥が次々と飛来する。
勢いを剣に乗せ、タイミングよく切り払う。かつてないほどの衝撃が、柄を通じて伝わった。
足が滑り、手を着きかける。勢いに任せて跳びあがり、三匹目を蹴り落とす。アドレナリンが鼓動と視界を加速させる。
一回り大きな始祖鳥が旋回している。五匹目を弾き飛ばしたとき、それが飛びかかってきた。
鋭い爪がよく見えた。
爪を剣で受け止める。刃が折れ、闇夜に消えた。
立て直すより早く、黒い歯が腕を貫く。感覚が抜けていき、意識の途切れが眠気となって襲ってくる。
敵は腕に噛み付いたまま上空へと離脱する。冬の希薄な空気が余計に瞼を重くした。
本当に勇者ってわりに合わない。
地上の村からは暖かな灯が見える。
戦士には悪いが僕も勇者だ。守るべきものがある。
ペンダントの魔蒼石が青く輝く。呼応して地上の魔力石が赤い星空を描き出す。
湧き出た炎が折れた刀身を形作る。
燃え盛る意思を闇の巨鳥に突きたてた。歯がようやく僕を離した。
自由落下しながら剣を両手に持ちかえる。地上の魔力石からも魔力が集まり、一層巨大な刃となる。
眩い炎が夜を払い、青空を作り出す。
龍は首をもたげる。そして、光が映った青い目をゆっくり閉じた。
僕は一つの炎の剣となり、龍の頭に深々と突きたてた。
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