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「で、おまえはその陸の王子と契りを結ぶんだろ」
いつの間にか灯台男が琉海のすぐ近くに立っていた。
ぶわっと琉海の全身に鳥肌が立つ。
さっき水に触れたとき現れた鱗が皮膚の下で蠢いているようだった。
ジョーダンじゃない!
こんな男が陸の王子であるはずがない。
こんな男と契りが結べるかっつーの。
いや、でも待てよ。
溺れた男は2人いたはずだ。
もしかして死んでしまった方が陸の王子だったのだろうか。
いや、いや、いや、王子は海の姫に助けられるのが王子なのだから、死んでしまった男は王子ではない。
……ということは。
琉海は目の前の灯台男を見上げた。
なんとも嬉しそうに意地悪そうな顔をした灯台男が琉海を見下ろしている。
「サイアク」
「さぁ、さっさと契りを結ぼうか」
伸びてくる灯台男の手に琉海は思いっきり噛みつくと男を跳ねのけ家を飛び出した。
目の前の浜辺に走り出て水際を目指す。
サイアク、サイアク、最悪だ。
もともと王子より食べ物の方に期待が大きかった琉海だったが、まさか王子が性悪な男だとは思わなかった。
王子に恋することができるか心配したこともあったが、まさか王子を嫌いになるとは思わなかった。
人目に付きにくい岩陰を見つけると琉海は水の中に向かって叫んだ。
「姉さんたち、姉さんたち」
しばらくして1人の人魚が水面から顔を出した。
そしてまた1人、それに続いてまた1人と、次々に姉たちが顔を出す。
姉たちは琉海の格好に驚く。
「どうしたの琉海そんな変な格好して」
「陸の王子を見つけたよ」
姉たちはどよめいた。
「2人とも?」
「いや、1人は死んでた」
「早速でかした琉海」
「さすが我が妹」
「ねぇ、すぐに王子を殺しちゃダメなの?」
琉海は灯台男がいかにひどい男かを切々を姉たちに語った。
姉たちはそれはひどい男だと琉海を慰めた。
長年手塩にかけて育てた妹、自分たちの運命がかかっているだけではなく姉たちは琉海をとても大切にしているのだ。
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