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「でも琉海、1年間は我慢しなくちゃいけないのよ」
「そうじゃないと王子と一緒に琉海も死んでしまうよ」
「え、あたしも?」
1年以内に王子を殺すと姫も一緒に死んでしまうらしく、王子だけに死んでもらうには1年待たねばいけなかった。
「だから1年は頑張って。それに愛と憎しみは表裏一体って言うじゃない。もしかしたら気持ちが変わるかもだし」
いや、それはないだろうと、別の姉が口を挟む。
姉たちは琉海そっちのけで話し合いを始めた。
やがて結論が出た。
とにかく1年間は王子のそばにいること。
1年経っても王子が嫌でどうしようもないなら殺してもいい。
でももし1回でも契りが結べそうだったらトライしてみること。
「そういうことは、えいやって目を閉じていれば終わるもんよ」
「それでいいのかな」
伝説には真実の契りとあった。
そんなえいやって感じでいいのだろうか。
とにかく1年経たないと男を殺して人魚に戻れない以上どうしようもない。
琉海は渋々うなずいた。
「ねぇそれで今日は何日?」
琉海が訊ねると姉の1人が今日は12月18日だと応えた。
「じゃ1年後の今日までの我慢かぁ」
琉海はため息混じりに呟いた。
戻っていく人間になった琉海の後ろ姿を見つめながら姉たちは囁いた。
「大丈夫かしら」
「今日のところはとりあえずなだめてあげといて、少しづつ琉海が王子に恋するように仕向けないとね」
「琉海が失敗するとまた何百年待たなければいけないからね」
琉海の姿が見えなくなるまで姉たちは見守った。
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