念願の肉

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 バケツに張った水に手をつけると虹色の鱗が浮き出てきた。  その手で床を拭くとぱらぱらと鱗が床に落ちた。  砂はきれいになっても代わりに琉海の鱗が落ちる。 「なんだよこれ?。やってらんないんだけど」  琉海はいやになってソファーに寝転ぶとテレビをつけた。 「なんか面白いのやってないかなぁ?」  チャンネルを回しているとくるくる床を這う円盤状のものが画面いっぱいに映し出された。 『忙しいあなたの頼もしい味方。お掃除は留守中ルンバにお任せ!通常5万円のところを今日は39999円で。それも!今なら1台買えばもう1台が半額。さぁ、残り30分です。今すぐここにお電話を』  琉海は鼻がぶつかるほどテレビ画面に顔を近づける。 「うわぁ、これいいじゃん。これがあったら楽じゃん」  琉海はきょろきょろとリビングを見回し電話を見つけると早速電話をかける。 「もしもしルンバを1台ください」  待てよ。  この家は広いから1台では足りないかもしれない。 「えっと、やっぱり1台じゃなくて」  注文を終えた琉海は満足気にまたソファーに寝転がろうとした。  すると今度はテレビ画面いっぱいに大きな肉が映し出される。 『脂身と赤身のバランスがパーフェークト。最高級松坂牛A5ランクの肉300g3万円のところを本日18900円で!』  厚切りの肉が鉄板の上でじゅうじゅう音を立てている。 「肉、肉、肉」  琉海は電話を手に取る。  人間の世界って便利だな。  電話1本でお金さえ払えば好きなものが手に入る。  琉海はお金について姉たちから習って知っていたがお金の価値とかそういうものについてはよく分かっていない。 「肉早く届かないかなぁ」  琉海は生唾を飲み込んだ。  
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