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「俺のこと覚えているかな」
波打つ声に私は肯定する。
そのころの記憶は曖昧だし、なぜ池に落ちたのかもわからないけれど私を救ってくれた色だけは鮮明に覚えている。
「私、あなたの髪の色よく覚えています。その色が私を救ってくれたから」
青くきらめく色に無意識に手を伸ばす。
指の隙間を透き通るやわらかな髪質。
私の手を彼の大きな手が包む。
「俺はこの色があまり好きじゃないから。そんな風に言われるとうれしいよ」
目を細めて笑う姿にはじめて彼の顔を見たと思った。
こんな風に笑うんだ。
包んだ手を掴んで指を絡めあう。
長いまつげを伏せ、薄く口を開けて指を遊ぶ。
その様子を見ていたら彼と目が合って、いたずらっ子のような表情をする。
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