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佐藤里子は、歯磨きが好きでした.
歯磨きをすると、スッキリして気持ちがいいのです.
朝昼晩と一日三回、歯磨きをしています.デンタルフロスも使っています.
学校から帰って来ると、ママからお使いを頼まれました.
「里子、いいところに帰って来たわ.ちょっとスーパーまで行って、三温糖を一袋、買ってきて頂戴」
「はーい」
里子は、ママから財布を預かって、家から200メートル先の食品スーパーへ砂糖を買いに行きました.
買い物を済ませた里子は、レジ袋を断って2円引きされた三温糖を抱えながら、家に向かって歩いていました.
しばらくすると、ペタペタペタペタと妖しい足音があとを付けて来るのに、里子は気づきました.
立ち止まって振り返ると、そこには妖怪ムシバ小僧がいたのです.
「ねぇ、それ、砂糖でしょ?」とムシバ小僧が言いました.
「ええ、そうよ」と里子は答えました.
「食べていい?」
「何言ってるの.ダメに決まってるじゃない」
すると、ムシバ小僧は両腕を大きく開いて、里子に向かってグングン近付いて来ます.
急に、ムシバ小僧は止り、うしろに飛び退きました.
突然、ムシバ小僧と里子の間に何者かが割り込んで来たのです.
「誰だ、おまえは!」と言ったのはムシバ小僧.
「私の守護霊よ」と答えたのは里子.
「なんだって!」と驚いたのはムシバ小僧.
「私の守護霊.名前はダイヤモンドデンタルリンス!でも私の守護霊が見えるなんて、あなた只者ではないわね」
「守護霊だか、何だか知らないがぁ、お前らぁ、まとめて食ってやるぅ!」
叫び声をあげながら、ムシバ小僧が突進してきます.
守護霊のダイヤモンドデンタルリンスが「フロォースパァーンチィ」と声に出しながら、ムシバ小僧に得意技を放ちました.
大きな衝撃音がしました.
しかし、ムシバ小僧は数歩よろめて後ろへ戻っただけで、倒れません.
「大したことは無いな」と言いながら、ムシバ小僧はニヤニヤ笑っています.
「あら、ダイヤモンドデンタルリンスのフロスパンチを受けて倒れなかったのは、あなたが初めてよ.結構やるじゃない」と言ったのは里子.
「ウピョピョピョピョピョピョォー!」
怒りに燃えて奇怪な叫び声をあげながら、ムシバ小僧が再び突進してきました.
ダイヤモンドデンタルリンスはフロスパンチを繰り出しました.
ムシバ小僧は頭を下げて、攻撃をかわしました.
そしてムシバ小僧は、大きな口を開けて、跳びかかったのです.
その瞬間、「プラアークゥコントロォールキッィーク」と声に出しながら繰り出したダイヤモンドデンタルリンスの必殺技が、ムシバ小僧の顔面に炸裂しました.
一秒と経たないうちに、ムシバ小僧は分子のレベルまで分解されて跡形もなく消滅しました.
「ダイヤモンドデンタルリンスの必殺技、プラークコントロールキックにかなう者なんて何処にもいないわ」と言って、里子は走って家に帰りました.
ムシバ小僧は消え去りました.しかし、いつまた、第二のムシバ小僧が現れるか誰にも分かりません.
歯磨きを怠れば、次は君の前に現れるかも知れないぜ.
(了)
―― 奥付 ――
創作絵本『妖怪、ムシバ小僧』
著者:茜町春彦
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