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ムシバ小僧は、恐ろしい妖怪です.
ずいぶんと昔のことです.甘いものが大好きな少年がいました.
甘いものなら何でも食べましたが、歯磨きが嫌いでした.
やがて歯が痛くなりましたが、甘いものを食べ続けました.そしてまた歯磨きはしませんでした.
ますます歯が痛くなり、全身が震える程でしたが、歯磨きもせずに甘いものを毎日ずっと食べ続けました.
そしてとうとう或る日、虫歯をこじらせて死んでしまいました.
しかし、少年の甘いものに対する執念は消えず、やがて怨念に変わり、それがいつしか妖怪ムシバ小僧を生み出したのです.
ムシバ小僧は、甘いものを見つけると、食べている人ごと丸呑みにしてしまう恐ろしい妖怪です.
雨田千代子は、飴やチョコレートが大好きな女の子です. でも、歯磨きが嫌いでした.
今日の朝食は、ママが作ったホットケーキです.
イチゴジャムとアイスクリームとチョコレートがのせてあります.
お茶や牛乳は嫌いなので、いつもコーラを飲んでいます.
今朝は、蜂蜜入りコーラです.
「食べ終わったら、歯を磨いて、早く学校へ行きなさい!遅刻するわよ」とママが言いました.
「歯磨きは夜に、まとめて磨きまーす!」と言いながらママの横をすり抜けた千代子は、通学カバンを抱えて学校へ向かいました.
玄関の内側で目を吊り上げたママが、千代子を見送っています.
学校に向かって歩きながら、千代子はカバンからキャンディーを取り出して舐め始めました.
しばらくすると、ペタペタペタペタと妖しい足音があとを付けて来るのに、千代子は気づきました.
立ち止まって振り返ると、そこには妖怪ムシバ小僧がいたのです.
「ねぇ、それ、どんな味がするの.甘い?」とムシバ小僧が言いました.
「うん、甘いわ.とても甘いわ」とキャンディーを舐めながら千代子は答えました.
「食べていい?」
「えっ、なんで・・・来ないでー」
「食べたいんだよぉ」
「近寄らないで、やめて・・・ぎゃあーあぁぁ・・・」
ムシバ小僧は、両手でガッチリと千代子の体をつかんで持ち上げて、そして、キャンディーを舐めている千代子を丸呑みにしてしまいました.
大福慶喜は、和菓子や洋菓子が大好きな男の子です.いつも、こっそり独りで、お菓子を食べています.でも歯磨きは嫌いでした.
授業が終わって、帰りの時間になりました.
校門のところで友達と別れて、慶喜は独りで家の方向へ帰って行きました.
慶喜は家に向かって歩きながら、どら焼きをカバンから取り出して食べ始めました.
しばらくすると、ペタペタペタペタと妖しい足音があとを付けて来るのに、慶喜は気づきました.
立ち止まって振り返ると、そこには妖怪ムシバ小僧がいたのです.
「ねぇ、それ、どんな味がするの.甘い?」とムシバ小僧が言いました.
「うん、甘い.あんこがすごく甘い」と慶喜は答えました.
「食べていい?」
「やだよ!」
「食べたいんだよぉ」
「来るな、えっ、えっ、なにをするんだ・・・ぎゃあーあぁぁ・・・」
ムシバ小僧は、両手でガッチリと慶喜の体をつかんで持ち上げて、そして、どら焼きを手に持った慶喜を丸呑みにしてしまいました.
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