サヨナラと送別

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 お盆。おじいちゃんの墓に来た。けれど、なんで死んだのか知らない。  私は、記憶喪失だった頃がある。  「おじいちゃんは、あなたをかばったの。あなたのせいよ」  ずっとそういわれ続けていた。もう親もいない。  今ももうすぐ記憶が消える。  別れる理由は、多分、ない。でも、人はいつかサヨナラをするって誰かが言った。  血濡れた包丁と、ぶら下がる麻縄と大きなテルテル坊主。  「もうすぐあえるかな」  送別はもうした。  親と、おじいちゃんに。  おじいちゃんは、私が交通事故に遭いそうになっていたところを助け出してくれた。しかし、代わりにおじいちゃんは死んだ。おじいちゃんに助けられた。  誰かも知らないおじいちゃんに。  血のつながるどころかどこに住んでるかも知らないおじいさんに助けられて私が殺したようなものだ。おじいさんの血族である身内に、私はずっと非難を浴びせられている。  「あなたがしねばよかったのよ」  「あなたがしねば、おじいちゃんがしぬことはなかった」  ああ、そうだ。私は。
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