0人が本棚に入れています
本棚に追加
《プロローグ》
A国は、B国へ宣戦布告を行い、軍隊を派兵しました.
しかしA国軍は、B国軍の反撃に遭い、撤退を余儀なくされています.
《A国軍、前線》
「こちら、前線です.指令本部、応答願います」
「こちら、指令本部.戦況を報告せよ」
「甚大な被害を受けています.撤退しても、よろしいでしょうか」
「撤退は出来ない」
「では、劣化ウラン弾の使用を許可して下さい」
「いやっ、それは・・・チョット待ってくれ.追って連絡する」
《A国軍指令本部》
「本部長殿、如何しましょう?」
「現在の国内政情を鑑みるに、劣化ウラン弾の使用は許可できない!」
「しかし、それでは・・・」
「新型爆弾を使うことにする!」
「えっ、経済兵器研究所の開発した新型爆弾ですか」
「そうだ.直ぐに準備せよ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
「はっ!」
A国では、劣化ウラン弾製造メーカーと国防省事務次官との贈収賄が発覚し、大騒動になっていました.劣化ウラン弾の使用ができる政治状況ではなかったのです.
しかし、A国国防省の外郭団体である経済兵器研究所が新型爆弾の開発に成功しており、既に量産体制に入っていました.
開戦直前に経済兵器研究所は、国防軍指令本部長へコッソリと多額の賄賂を贈り、新型爆弾の使用を決定させていたのでした.
開戦が決定されたのは、経済兵器研究所が裏で糸を引いていたからだと噂されています.
《A国兵器工場》
「おーい、こっちだ、こっちだ・・・ゆっくり降ろせ」
《A国兵器工場》
新型爆弾が段ボール箱に詰め込まれ、軍用トラックで前線へ大量に輸送されていきます.
《A国軍、前線》
「次だ!」
「自動操縦装置、オンにします」
「よーし!」
ドローンに吊り下げられた新型爆弾が前線から次々と飛び立っていきます.
《B国内の至る所》
飛び立ったドローンは、B国全土に新型爆弾を隈無く投下していきます.
《B国内の至る所》
「なんだこりゃ・・・」
「カネだ!」
「お札だ!」
段ボール箱の中身は、精巧に印刷され、適度にシワシワ加工されたB国の紙幣でありました.
この偽札はB国内のATMや自動販売機で使えて、本物と全く見分けがつきませんでした.
《B国内の至る所》
「すげー!」
「これで俺も億万長者だー」
「うおー、フォアグラのキャビアサンドを食ってやるぅ・・・」
《B国内の至る所》
「こっちにもあるぞー」
「おカネよー!」
「札束だー、札束だー・・・」
「あわわわ」
「会社辞めてやる、会社辞めてやる・・・」
「うっしっし!」
のちに偽札爆弾と呼ばれるようになる、この新型爆弾が投下されると、B国民は先を争って飛び出て来て、散らばる偽札を掻き集め、残らず持ち去っていきました.
投下された偽札の総額はB国の国家予算に匹敵する額であったと言われています.
《エピローグ》
B国は経済が大混乱に陥り、戦争続行不能となってしまいました.
しかし、国土割譲を懸念するB国軍は徹底抗戦の構えを崩さずにいました.
そこへ突如として、C国が参戦の動きを見せたのです.
これに慌てたA国は、外交ルートを通じてB国へ国土割譲はしないと密約を与えました.
A国の新型爆弾投下開始から十日後に、B国は全面降伏し、戦争は終結しました.
(了)
―― 奥付 ――
創作絵本『新型爆弾』
著者:茜町春彦
最初のコメントを投稿しよう!