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第三章
文化祭最優秀賞はうちのクラスに決まった。その瞬間、みんなハイタッチした。
どさくさまぎれに抱きついてきたスケベ蛇はどついておいた。
「何すんのこのスケベ!」
「ちっ、残念。まぁいい、このエプロン戦利品として持ち帰ろう。家でもつけてもら……」
「誰が着るか!」
容赦なくはりたおした。
夫婦漫才とか言われたのは心外だ。誰が夫婦だ。
みんなひとしきり笑ったところで、一人が言いにくそうに切り出した。
「加賀地さん。ごめんね、これまで。実は何度か呪いの手紙書いたことあるの」
「俺も……。ごめん」
「実はわたしも……。ごめんなさい。加賀地さん夫婦のおかげで文化祭成功したのに、ひどいことを」
自分も自分もと手が上がる。想像通りというか、クラス全員が呪いの手紙を書いた経験があった。
学級委員(前の委員長は転校したため、彼女はその後就いた別の子)が一歩進み出る。
「もう二度としないって約束する。それで、その……あつかましいんだけど、二人とも友達になってくれる?」
……ふーん。裏を返せば、これまでは友達と思ってなかったわけね。とあたしは意地の悪いことを考えた。
九郎は戸惑ってあたしを見てくる。
されたことは忘れない。これまで友達と思ってなかったって事実も。あたしも九郎も恨む権利はあるだろう。
だけど。
そこは飲みこんで、にっこり笑った。
「何言ってんの。もう友達でしょ?」
ほっとしたように教室に安堵が広がった。
九郎が小声で聞いてくる。
「……東子は許すのか?」
「仕打ちは忘れないよ、忘れられない。でも、ここで復讐とか考えたら、あんたを悪者に仕立てて封印した誰かさんと一緒になる」
九郎がハッとして黙った。
「それに、いつまでも憎しみに浸ってるのは性に合わなくてねー。どんな経験も糧に、よりよい方へ進んだ方が建設的だと思わない? それが何より自分のためになると思うよ」
さて、と。
「加賀地さん加賀治くん、打ち上げやろー」
「うん」
ねえ、孤独な蛇神様。友情すら分からず、独りぼっちだったかわいそうな神様。あたしがいることでもっとたくさんの人と関わることができるなら。
しょうがないから、もうちょっとだけ傍にいてあげようかな。
……ちょっとだけ。あとちょっとだけだからね!
心の中で思いつつ、寂しさすら知らない蛇神の手を引いた。
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