第二章

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「会議は踊る、されど進まずと言うだろう。そういうことだ。俺が土地神に戻ったことで、人ならざるものたちも増えたな。しかし作物の収穫高までは間に合わんし、俺に豊穣の力はない」 「なるほど。農家も高齢化で大変なとこに収入減はきついよね。何か力になれないもんか……」 「お嫁様、民のことまで考えて下さるとは……! さすが蛇神様のお嫁様です!」  そこでキラキラした目向けないでくれるかな、店長たち。あたしは違うって。 「―――よし、クラスのメニュー決めた」 「えっ、何?」 「あちこちに声かける必要がありそうだな。うむ。帰るぞ、東子」  訳が分からないながらも一緒に帰った」      ☆  九郎が考えたのは、授業の一環として農家と連携したメニューだった。  蛇神様の見事なプレゼンにより、急きょ決定。わー、神様がプレゼンとか。  猛暑の影響で正規品として売れないB・C級品を使う。持ち運びができ、子供や高齢者でも手が汚れず食べられるメニューを目指した。  栗やカボチャを生地に練りこんだ丸形プチケーキは、上部にチョコかけてどんぐりに見立てる。持ち帰りも可能な包装にした。柑橘類やキウイはフレッシュジュースに。  栗の皮むきはクラスみんなでやって、すごく大変だった。 「何でどんぐりの形? 蛇にするかと思った」 「自分の形のものが食べられるって、ちょっと精神的にな……」 「ああ、そう」  このプロジェクトは今後、九郎肝入りのカフェに引き継がれるという。行政側も噛んで、街おこしとして行われることになった。 「高校生による地域との交流・貢献」と銘打って大々的に宣伝。当日は大賑わいだ。 「いらっしゃいませー」 「ありがとうござましたー」  九郎はエプロンつけてウェイターやってる。いつものじゃなく、男子共通の青いシンプルなやつだ。  女子のエプロンは男子全員一致でかわいい白のフリフリが可決された。ものすごく不本意ながら、あたしもつけてる。 「か……っ、かわいい! 東子超かわいいい! 尊い! 死んだ。俺の嫁がかわいすぎて三回くらい死んだ」  そのまま黄泉行ってこい。 「加賀地さん、夫婦仲いいね」 「よくない! そんで嫁じゃない!」  九郎めええ、間違ったマインドコントロールは解け!  でも不思議だ。あたしがクラスメートと屈託なく話せるなんて。いつぶりだろう。
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