13人が本棚に入れています
本棚に追加
みんな親し気に話しかけてきても、何か嫌なことがあると『悪神』のせいにして呪いの手紙を書く。そしてあたしの下駄箱かうちの神社へ。悪意ばかり受け取らされ、いつからか人とあまり関わりたくなくなってた。
だから嬉しい変貌だけど、ヒューヒューはやし立てるのはやめろ。
「やってらんない。あたし厨房入る。裏方がいい」
「えー、加賀地くん喜んでるじゃん。見せてあげなよ」
裏に逃げこもうとするも、数人がかりで押し出された。ひどい。
「にしても、加賀治くん接客上手いねぇ。何事もソツがないし」
「いいじゃん、パーフェクトな旦那様。私もあんな人と結婚した~い」
熨斗つけて差し上げよう。人じゃないよ。
今もたくさんの女の子に囲まれてるし、一人くらいもらってくれないかな。ラインのID教えてだの、一緒に写真撮ってだの、告白までされてる。
と思ったら、一人の男性が九郎の肩を親し気にたたいた。
「悪いね~、お嬢ちゃんたち。こいつにはもうお嫁さんいるんだ」
現れたのは、黒髪黒目のスポーツマン風イケメン。
どこにでもはいなさそうな、髪が買った美貌。
人間じゃない。
本来の姿も人型のようで、視えはしないけど本能的に分かる。隠してても存在感が別格くすぎ。たぶん、かなり高位の神様。
「―――スサノオ」
九郎が驚くでもなく、男性の名を口にした。
スサノオ? ……って、ええええええ?! 須佐之男命?!
九郎はエプロンをはずし、その辺りに置いた。
「悪い、ちょっと休憩していいか?」
「どうぞどうぞー。なら加賀地、このプラカード持ってってくれ。歩きついでに宣伝よろしくー」
九郎は律儀にカード持って出て行った。男性も続くと思いきや、あたしの腕をつかんだ。
「トーコちゃんもおいで」
「え? 何であたしの名前」
「おいっ、東子に触るな!」
一瞬で戻ってきた九郎が男性をひっぺがし、あたしを後ろに隠した。
「おーやおや。ま、いい傾向だ。それよりその子も連れて来いよ」
「…………」
ため息ついた九郎に促されるまま、あたしも屋上へ行った。今日静かなところはここしかない。鍵は男性が指鳴らしただけで開いた。
「トーコちゃんは初めましてだな。オレ様はスサノオ。名前くらいは知ってるだろ?」
「知ってるも何も、超有名な神様じゃないですか!」
八岐大蛇退治した神様だ。道理でその筋肉。
「何しに来た」
最初のコメントを投稿しよう!