第二章

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「お前が復活した祝いに来たんじゃねーか。神無月だってのに、出雲来ねーしさ。嫁見せびらかしに来いよ」  神無月。そういえば十月は日本中に神様が出雲大社に集まる月のはず。 「行かないの?」 「八岐大蛇の息子だから嫌がるやつもいるだろーって考えてんだよ、こいつは。事情は皆知ってんだ、そんなやついねぇってのに」 「……お前が話したのか」  はーっとため息つく九郎。 「当たり前だろ? オレ様はダチを見捨てねぇ。いくらお前が罰だって甘んじて受けてたからって、黙って見てるわけないだろ?」 「……ダチ?」 「なかなか上手くいかなかったけどな。でもようやく成功した」  九郎はハッとして、 「待て。まさか代々加賀地家に」 「ああ。『封じられてるのは本当に邪神か?』って代々色んな手で問いかけてきたぜ。トーコちゃんの母親みたく疑問に思うものは何人かいた。が、実際行動に移したのはトーコちゃんだけだったな。まったく、長かったぜ。てわけでトーコちゃん、オレ様は感謝してんだよ。なにしろダチを解放してくれたんだからな」 「はあ」 「―――ちょっと待て。俺とお前は友人だったのか?」  九郎が素で聞いた。 「は?」  あっけにとられたあたしと違い、須佐之男命は想定内といったふううだった。 「お前なぁー。友達いなかったから分かるけどよ」 「えっ、九郎って友達いなかったんですか」 「八岐大蛇の息子だろ。いわれない敵意向けられること多くてな。ああ安心しろトーコちゃん、だからこいつに元カノとかいねーよ。今は配下持ってるが、昔は頑として拒否してたんだぜ。横暴な父親の被害者を助けてて、恩返しに仕えたいって連中けっこういたのに断って。自分の傍にいたらとばっちりくうからって、わざと遠ざけて独りだったんだぜ?」 「…………」  なんて……なんて悲しい。  九郎を見上げれば、眉をしかめて黙っていた。 「今はもうあの神もどきも退治したし、普通に土地神やっててなにより。かわいい嫁さんももらってな」 「あたしは嫁じゃないです」 「神の間ではそう認識されてるぜ。あきらめろ♪」  めっちゃ軽いノリで言われた。軽くない発言だよ! 「やっと平穏な暮らしに、嫁さんに名前も付けてもらった。学生生活ってのも楽しそうだなー。祭りも盛況だし。これ美味い」  いつの間に買ったのか、プチケーキぱくついてる。  そこで須佐之男命はふいに真面目な顔になった。
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