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「なあ、オレ様はほんとよかったと思ってんだよ。欲も執着も一切なかったお前が、やっと欲しいものができたんだ」
独りぼっちな蛇神の、たった一人の友人。恐らく初めての。
「……そうか、俺とスサノオは友人だったのか……」
何百年も経った今さら知ってうなずく蛇神。
不憫すぎる。どれだけ孤独だったんだ。
あたしは九郎の服の裾を引いた。
「それだけじゃないでしょ。クラスのみんなももう友達でしょ。あたしだっているじゃない」
「…………。そうだな」
ふわっと優しく九郎は笑った。
うっ。
うっかりドキッとしてしまう。
待て、最近どうした私。顔の血行よすぎだ。
須佐之男命はにやにや笑ってた。
「おーおー、新婚さんはいいねぇ。オレ様もクシナダヒメんとこ帰るぜ」
「あれ、クシナダヒメって……」
八岐大蛇に食べられそうになってたのを救った姫だ。確か須佐之男命の娘が大国主命と結婚するころには、もう亡くなってたはず。
「現代は黄泉のシステムも変わってな、前のように一緒に暮らしてるぜ。次来る時はオレ様の嫁も連れてくる」
「また来る気か。てか、何しに来たんだ」
「ダチに会いに来たに決まってるだろ。じゃーな」
ふっと姿が消えた。
九郎があきれてつぶやく。
「本当に何しに来たんだ、あいつは」
「ただよかったなって言いに来たんでしょ」
「それだけのために?」
「友達ってそういうものよ」
「…………。そうか、そういうものなのか……」
うーんとまだ首ひねってる。
まったく、気の毒な神様だ。
「さ、教室戻ろうか」
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