第二章

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「なあ、オレ様はほんとよかったと思ってんだよ。欲も執着も一切なかったお前が、やっと欲しいものができたんだ」  独りぼっちな蛇神の、たった一人の友人。恐らく初めての。 「……そうか、俺とスサノオは友人だったのか……」  何百年も経った今さら知ってうなずく蛇神。  不憫すぎる。どれだけ孤独だったんだ。  あたしは九郎の服の裾を引いた。 「それだけじゃないでしょ。クラスのみんなももう友達でしょ。あたしだっているじゃない」 「…………。そうだな」  ふわっと優しく九郎は笑った。  うっ。  うっかりドキッとしてしまう。  待て、最近どうした私。顔の血行よすぎだ。  須佐之男命はにやにや笑ってた。 「おーおー、新婚さんはいいねぇ。オレ様もクシナダヒメんとこ帰るぜ」 「あれ、クシナダヒメって……」  八岐大蛇に食べられそうになってたのを救った姫だ。確か須佐之男命の娘が大国主命と結婚するころには、もう亡くなってたはず。 「現代は黄泉のシステムも変わってな、前のように一緒に暮らしてるぜ。次来る時はオレ様の嫁も連れてくる」 「また来る気か。てか、何しに来たんだ」 「ダチに会いに来たに決まってるだろ。じゃーな」  ふっと姿が消えた。  九郎があきれてつぶやく。 「本当に何しに来たんだ、あいつは」 「ただよかったなって言いに来たんでしょ」 「それだけのために?」 「友達ってそういうものよ」 「…………。そうか、そういうものなのか……」  うーんとまだ首ひねってる。  まったく、気の毒な神様だ。 「さ、教室戻ろうか」
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