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光速電車が開発されました.
停車駅を視察する為に、与党の有力代議士が鉄道省の担当官僚を連れてやって来ました.
駅長が代議士を出迎えて挨拶をしました.
「先生の御尽力の御蔭を持ちまして光速電車の急行列車を停めて頂く事が出来ました」
「吾輩に、もう少し力があれば特急列車も停める事が出来たんじゃがのぉー」
代議士は笑いながら答えました.
駅長が代議士と官僚を案内して光速電車のプラットホームまでやって来ました.
その時、駅員が駅長を呼びに来ました.
駅長は「ちょっと失礼します」と言って、駅長は駅員と共に慌てて駅長室へ行って仕舞いました.
駅長が戻るのを待っている間、うっかりと代議士がスマートフォンを線路に落として仕舞いました.
官僚が「わたくしが取りに行って参ります」と言って、線路に降りました.
スマートフォンを拾おうとした時、うっかりと官僚は足をレールに挟んでしまい抜けなくなって仕舞いました.
そして、うっかりと官僚は倒れて気絶して仕舞いました.
そのとき、光速電車の特急列車が速度を上げながら近づいていました.
たまたま、転轍機を点検していた保線区員がその事に気づきました.
転轍機を切り替えれば、光速電車の進路を引き込み線へ替えることが出来ます.
しかし、引き込み線の先には、たまたま5人のホームレスが酔っぱらってレールを枕に熟睡していたのでありました.
このまま特急列車を通過させて官僚1人を見殺しにするか、それとも転轍機を引き込み線側に切り替えて5人のホームレスに犠牲になってもらうか、と保線区員は迷いました.
保線区員は、たまたま持っていたサイコロを振って決めることにしました.
「一の目が出たなら、このまま通過させよう.一の目以外が出たなら、引き込み線へ切り替えよう」と独りごとを言いながらサイコロを投げました.
一の目が出ました.
保線区員は「これは何かの間違いだろう」と言って、転轍機を切り替えました.
(了)
―― 奥付 ――
創作絵本『光速電車』
著者:茜町春彦
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