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丸山への仲直りは、予想よりもずっと長引いていた。
僕が丸山と話すようになったのはそんなある日の、ほんの気まぐれみたいな偶然だった。たまたま日直としての仕事で帰りが遅くなって、仲直りを強いられていた丸山が荷物をまとめて帰ろうとしているところに遭遇したのだ。
『……っ、ぅ、う、ひっ……、うくっ、』
暗くなった夕陽の中、教室でひとりいた丸山は、逆光のせいで影しか見えなくて。光の面ばかり見ていたら見えなかっただろうその泣き顔を見てしまったのは、本当に運が悪かったな、と思ってしまう。
それを見て、少し足を止めてしまったから。
だって、あんな風に泣いている同級生の女子なんて見たのは、それが初めてだったから。
なんて声をかけたらいいかわからなくなって、そもそも僕なんかにかけられる言葉があるのか疑問になって、そもそもどうして声をかける気になっているんだとかそういう自問を投げ掛けることになって。
それがどれくらいの時間のことだったかは、正直わからない。けれど、たぶんそんなに長い時間ではなかったんじゃないだろうか。
それでも、きっと丸山が気付いてしまうくらいには長かったに違いない。
我に返って立ち去ろうとした僕に、教室からかけられた声。
『……なに見なかったことにしようとしてんの、待てよ』
泣き濡れた声に、僕は逆らえなかった。
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