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彼女こと丸山 優季は、いわゆる“陽キャ”というやつだった。クラスの中心になってはしゃいだり周りを引っ張ったりすることはないけれど、いつもその近くで一緒になって楽しんでいる感じ。
だから、僕らとは何の関わりもないはずだった。
お互いがお互いにとって空気のようなもので、きっとこの先何があってもそれが変わることはありえない――そんな関係性のなかで、僕らは同じ教室のなかにいた。
それが起こったのは、そんなある日のことだった。
僕の数少ない友人の高井 秀人の何気ない言葉が、クラスの中心にいた男子の癇に障ってしまったらしく、揉め事が起きた。
揉め事といっても、カーストの高いやつを相手取った瞬間にそれは、高井が一方的にリンチされるだけの流れになることが決まっていて。案の定、高井は正論すらも「つまらない理屈」にされて、公開処刑と称して土下座、それだけでなく高井の尊厳を踏みにじるようなことを平気でやってのけていた。
単に、クラスの総意という弱々しくて主観的な保証だけを根拠にして。
丸山も、最初のうちはそこに交ざっていた。
取り巻いて、高井の口に出すのも厭わしいほど無様な姿を笑っていた。しかし、段々不機嫌そうに顔が曇って。
『何かさ、つまんなくね、そういうの?』
ボソッと漏らしていた声は、悪意と同調で成り立っていたクラスの調和を、ガラスにひびを入れるように壊してしまった。
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