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蘇芳は立ち上がり、リクライニングチェアに座ってキーボードを打ち始めた。
「んー、どうしようかなあ。きれいな青い目だし、こういう色かなあ」
独り言を呟いている。どうやら色の名前で呼び合っているそうで、私の名前も色の名前で付けるようだ。私は気になっていたことをソファでくつろいでいる男に聞いた。
「……名前、なんていうの?」
「あ?俺? 萌黄」
「モエギ?」
「ああ」
「……そう」
その会話を聞いた蘇芳は、「ええ?名乗ってなかったの?」と驚いて椅子ごとこちらを向いた。
「そういうお前だって名乗ってねえだろ」
「そうだけど」
「おい」
仲がいいんだなあと暢気なことを思った。
「じゃあ改めて言うね。僕は蘇芳。高校生でハッカーやってるんだ」
「俺は萌黄。学校には行ってねえ」
「……ハッカー?」
「うん。ハッカー。知ってる? パソコン一つあればどんなウイルスでも忍び込ませられるし、対処できる。相手のパソコン、携帯に侵入することだって可能なんだ。すごいでしょ?」
「……うん、すごい」
「こいつはただの悪ガキだよ」
「兄さんもね」
すると、家のチャイムが鳴った。人が訪ねてきた。
「やあ!」
「っげ」
「なんだいそれの反応。ひどいなあ」
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