3.訪問者

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 蘇芳は立ち上がり、リクライニングチェアに座ってキーボードを打ち始めた。  「んー、どうしようかなあ。きれいな青い目だし、こういう色かなあ」  独り言を呟いている。どうやら色の名前で呼び合っているそうで、私の名前も色の名前で付けるようだ。私は気になっていたことをソファでくつろいでいる男に聞いた。  「……名前、なんていうの?」  「あ?俺? 萌黄」  「モエギ?」  「ああ」  「……そう」  その会話を聞いた蘇芳は、「ええ?名乗ってなかったの?」と驚いて椅子ごとこちらを向いた。  「そういうお前だって名乗ってねえだろ」  「そうだけど」  「おい」  仲がいいんだなあと暢気なことを思った。  「じゃあ改めて言うね。僕は蘇芳。高校生でハッカーやってるんだ」  「俺は萌黄。学校には行ってねえ」  「……ハッカー?」  「うん。ハッカー。知ってる? パソコン一つあればどんなウイルスでも忍び込ませられるし、対処できる。相手のパソコン、携帯に侵入することだって可能なんだ。すごいでしょ?」  「……うん、すごい」  「こいつはただの悪ガキだよ」  「兄さんもね」  すると、家のチャイムが鳴った。人が訪ねてきた。  「やあ!」  「っげ」  「なんだいそれの反応。ひどいなあ」     
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