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1.人形の役目
目が覚めたら、そこは知らない場所だった。
真っ白なシーツ、真っ白な天井。横にある窓から光が差し込んでいる。
ここはどこだ。
一見すると、人の家のような気がする。人の家のにおいがする。
「あ、起きた?」
正面の扉からひょっこりと男が顔を出した。
誰だろう。
「……」
「何も覚えてないの? 名前は? ……まあ、必要ないんだけどね」
最後の方は小声だったため聞き取れなかった。
しかし男の目が一瞬変わった気がした。
怖い。
「僕は君のご主人様だよ。これからは君は僕の“人形”として生きていくんだ。
何もしなくていいんだよ? ただずっと僕の言うとおりにすればいいんだ」
人形? ご主人様?
何のことやらさっぱりわからない。
「これから君は喋っちゃダメ出し勝手な行動をすることは許されないよ」
「……」
「そうそう、それでいいの。じゃあまず着替えようか」
そこも自分でやってはいけないのか。私は、完璧な、主の“人形”を演じなければならないというのか。
白い薄着のワンピースから、白と黒のワンピースに着替えた。
「うん。よく似合ってる」
「おい、蘇芳。朝飯いるか?」
「いるよもちろん、待ってて」
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