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 沖田は、雰囲気を変えようと滝を見下ろす展望台のベンチから立ち上がった。そして、ふたりを公園にある茶店に誘った。公園に居ついている猫たちが餌を欲しがって遠巻きに三人の様子を窺っている。 「沖田クンの日常に変化はないの?」  和田聡子が、テーブルの真向かいの椅子にもたれ、寛いだ様子の沖田佐千夫に向かって問いかけた。 「俺?俺は難しいことなんかなんもないよ。牛を相手に楽しくやってるよ」  高校時代、佳代は沖田とさほど親しくなかった。沖田と和田聡子は家も近くで幼いころからの顔見知りなのだ。高校の同級生で地元に残っているのは結局、佳代と沖田のみらしい。その沖田が、たまたま実家に帰って来ていた聡子に声をかけて、三人だけのささやかな同窓会が実現したのである。
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