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めたりしないの。こんなもんかで済ますからあまり心理的葛藤がないのよね」  佳代にも、和田聡子の心理はよく掴めなかった。結婚していない者が既婚者の心理など分かろうとすること自体、無理があった。 「結局、聡子は、自分たちの結婚生活をもってまわった言い方でのろけているんじゃないか?なあ、高橋」  同意を得るように、沖田は笑顔で佳代のほうに視線を向けた。佳代は、沖田のあっけらかんとした表情に少しどぎまぎしながらもそれでも大きくうなづいた。  自転車で農道を走っていると、道端の稲の生長の様子がよく分かる。田植えが済んでひと月も経つと分けつが進み、株が太り、高さも三十センチを超える。  佳代は稲穂をそよがせる文月の風をまともに受けながら元気よくペタルをこぐ。もう、二十代も半ばを過ぎてしまったが、気分はまだまだ高校生のままだ。
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