12/21

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
 自転車をこぎながら、昨日、夕食の時、突然母が、自分の高校時代の友人の息子さんのことについて話を始めたのを思い出す。その男性は中学の教師で、年齢は三十二歳とのこと。女友達もいないらしく、結婚についても全く関心を示さないらしい。サッカー部の顧問をしていて、関心はもっぱらそちらの方に向いているらしい。世の中は晩婚化の傾向にあるが、それでも母の友人は息子の結婚のことが気がかりで夜も眠れないことがあるらしい。 「私は友達ほどには佳代の結婚のこと、心配してないわ。でも、孫の顔は早く見たいなあ。正の結婚もいつになることやら。でも、楽しみに待つつもりよ」 「結婚ねえ?私、とにかく、今の生活を軌道に乗せたいの。この町でたとえささやかでも自分の夢を実現させたい。とりあえずは、ピアノ教室をあと三つ開設したい。そして、将来、私の教室から世界的なピアニストを輩出することが最大の夢。だから、結婚には今ちょっと関心が湧かないのよねえ」  母は、口では分かったようなことを言いながら、内心は二人の子供が早く家庭を築いて
/47ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加