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の日が休みであろうとなんであろうと直ちに現場へ駆けつけるのが教師の常識なのだ。聡子の心労を思った。事故が不幸中の幸いで済むことを祈った。  二人だけの会話は佳代に緊張を強いた。実際、佳代は沖田のことをよく知らなかった。高校時代の沖田は男子の中で目立つ存在だったと思う。女子にも人気があった。クラスの女子と付き合っているといううわさがあったが、佳代の関心事は男女交際にはなく、もっぱら音大への進学のことで頭の中はいっぱいだった。 「こちらは牛さん相手に生活しているけれど、人間相手というのは、色々あってたいへんなんだなあ」  沖田は、佳代を目の前にしてだれに言うともなくポツリとつぶやいた。豪放磊落と言ってもいい沖田の口から労りの言葉が吐かれると、佳代は沖田に対する自分の印象が少しずつ変わっていくような気がした。 「学校の授業以外の仕事もいっぱいあって忙しいうえに、精神状態の不安定な中学生はよ
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