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 店は客足が途絶えることはなかった。一組が店を出ていくとやがて別の一組が店の扉を開けて空席を捜した。  佳代は沖田と二人だけのところを誰かに見られはしないかと気になった。沖田は、そんなことはまったくおかまいなしのタイプのようだ。沖田のそんな性格が羨ましかった。佳代は昔から他人の目を気にするほうだった。佳代はそれを思うと自己嫌悪に陥った。突き詰めていくとそれは音楽につながる。自分の心の中に生じる様々な葛藤を忘れるために音楽に打ち込んできた側面があるのではないかと、佳代は自己分析する。 「和田も大変そうだ。公務員だから身分は安定しているけれどとにかく気苦労が多いらしい。俺にはよくグチるんだ」 「職場はたいへんそうね。よく分かるわ。でも、旦那さんが同じ職種だから、お互い苦労が分かりあえていいんじゃないかな?」 「いやあ、どうもそんなでもなさそうだ。何日も口をきかないことがあるらしいよ」
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