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祝福される人と、祝福する人の立場の違いだけだ。そこに大人の変な気遣いが入り込むことは不幸なことだ。ただ、単純に赤ちゃんの無事な誕生を祈ればいいだけのことだ。 「実はね。おめでたいだけではないのよ。あなた、本当に知らないの?聡子さん、離婚するらしいのよ」 「えっ、意味がよく分からないわ?赤ちゃんの誕生と離婚が同時並行で進んでいるってわけ?」 「聡子さんのお母さんが、私のお友達と知り合いで思い余って話をされたらしいの。その友達も黙っていることに耐えられなくて私にだけ話してくれたってわけ。聡子さん、試練だね。赤ちゃんといっしょに人生の再スタートを切ることになるのよね」  母はいつになく饒舌だった。佳代は母のおしゃべりを茫然とした表情で聞いていた。聡子に同情する気持ちは湧かなかった。母がいうように聡子の身に試練が生じただけのことだと思った。  部屋に戻ると、わけの分からない疲れがどっと押し寄せた。椅子にもたれたまま天井を
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