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「早かったのね。今日もがんばろうね」  元気いっぱいの千夏は四年生。おとなしい姉の沙羅は六年生。まもなく、三年生の夏子もやって来た。  練習開始。公民館長さんの許可を得て置かせてもらっている電子ピアノの前で「始めます」のあいさつをする。夏子から順に課題曲の「メヌエット」を弾く。三年生の夏子はどうにか躓くことなく弾き終える。次は千夏。滑り出しは上々だったが、いつものところで躓く。 「できなあーい」  両手をブラブラさせてその先に進むことをしない。佳代は努めて冷静な口調で促す。 「前よりもうまく弾けているわ。失敗してもいいから最後まで弾くことが大切よ」  ようやく弾き終えた千夏は、失敗した自分がはがゆいのか、体を盛んに揺らしながら椅子を降り、姉の沙羅と入れ替わる。  沙羅の課題曲は難しい。だが、沙羅の演奏は危なげがない。難なく弾き終える。佳代は
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