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人の女の美しさが全開状態だ。  佳代は、聡子になにもかも完全に負けていると思った。聡子はこだわりをもたない性格だ。それに引き換え、佳代は概念にこだわる。例えばの話、音楽という概念にとらわれ過ぎている。音楽至上主義に陥っている。だから、高校の教員もやめた。結婚も音楽至上主義だから二の足を踏む。とらわれ過ぎているから音楽以外の大切な第一歩が踏み出せないでいる。踏み込んでみて、場合によってはそこで泥まみれになる経験をして初めて、音楽の方面にも良い影響が及んで来るはずだ。演奏にも深みが増したり、子供の指導にもさらに自信が持てたりするだろう。そんな反省の気持ちが湧き上がると佳代は居ても立ってもいられなくなる。 「沖田クン、うちのハルちゃん抱いてみてよ。ぷくぷくして気持ちいいわよ」  聡子が勧めると、沖田はおっぱいの匂いのする聡子の胸から陽菜ちゃんを恐る恐る両手で包み込むように抱き上げた。 「沖田クン、赤ちゃんの抱き方、上手!」  壊れものでも扱うように陽菜ちゃんを抱きかかえている沖田を、聡子はまるで子供の父
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