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沙羅の音楽の才能を買っている。将来を楽しみにしている。しかし、そんな特別な想いを口にも表情にも出したりはしない。  今度は佳代が演奏する。夏子と沙羅は佳代の演奏に集中するが、千夏の視線は佳代の手元を離れてあちらこちらと泳ぎ回る。千夏の興味は音楽にはない。とにかく体を動かすことが好きな子だ。それはそれでいい。しかし、一週間に二回、ほんの数時間、千夏にも音楽に触れて欲しいと思う。触れると触れないとでは、これから先の人生に微妙な差が生まれる気がする。触れたほうが人生は楽しいに決まっている。人生の味わいが深まると佳代は確信している。  演奏をさらに繰り返して練習は終わる。クーラーに準備してきた麦茶と飴玉を配る。ささやかな寛ぎの時間だが、子供たちはこの時間をとても楽しみにしている。 「佳代センセイ、お姉ちゃんね、この前、算数のテストで百点を二回続けて取って鼻高々
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