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 盆地に本格的な冬がやってきた。冬は毎年のことながら寒さが厳しく、明け方は気温が氷点下になることも度々だ。  クリスマスの発表会は成功の裡に終わった。地元出身の若手ソプラノ歌手の共演もあって子供たちの家族以外の来場者も多くあった。新聞にも囲み記事として掲載された。民間と行政がタイアップして文化活動を推進しているので、新聞社もその点に注目して記事にしてくれたのだと思う。自宅を開放しての教室も生徒確保の目途がついた。佳代は今までに感じたことのない高揚感を覚えていた。  自転車で寒風の中を突っ切って行くのは正直つらい。赤くほてった頬が痛い。吐く息も真っ白だ。 「佳代センセイー」  夏子と千夏が駆け寄って佳代に抱きつく。沙羅はいつものごとく一歩下がって三人の様
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