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のよね。先生もコンサートが終わって目標を見失った感じよ。だから、次の練習までに新しい目標を考えてきて、できたら四人で教え合いっこしようよ。どう?」  三人は同時に頷いた。むりやり元気を装っていた佳代は、沙羅の質問に助けられた気がした。重苦しい胸の中を一陣の爽やかな風が吹き抜けた感じがした。  三人を見送るために外に出た。陽がさして暖かだ。朝の寒さがうそのようである。三人は連れだって我が家の方角へ坂を上がっていく。三人か歩いていく坂の向こうに沖田の住む家がある。聡子の実家がある。沖田、聡子の顔が浮かんできて、それから、陽菜ちゃんのぷくぷくとしたまるっこい顔が浮かんできた。陽菜ちゃんが笑った。佳代も笑った。  佳代は晴れ渡った空を見上げながら、秘密の呪文を唱えた。 「地上には幾つかの花、大空には全ての星」  佳代は「花」、と口にしたところで沖田と聡子からコンサートの開催を祝う大きな花束を贈られたことを思い出した。佳代は現実にもどった。ふたりの結婚式に呼ばれたら、木
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