【3】君色

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 俺は一人でジタバタしている。  兄貴を味方につけ、真琴の告白を阻止する。 「ぜったいにダメだから!他の男と付き合うなんて、お前、兄貴の墓の前でよく言えんな」 「だって。お兄ちゃんの許可がないと付き合えないし。やっぱりダメだよね?」 「ダメダメ!バッカじゃねーの?一年で兄貴への想いが消えちまったのかよ」 「消えたりしないよ。お兄ちゃんへの想いは募るばかり……。でも、諦める。海渡がそんなに反対するなら、きっぱり諦めるよ」 「そ―そ―それが、正解!やめとけ!どーせ、ロクな奴じゃねぇんだから。もしかして、高校の上級生か?同じクラスの男子じゃねーだろうな」 「同じクラスだけど」 「うわ、誰だよ!?真琴に告るなんて、千年早い!」 「千年?私は妖怪か。お兄ちゃん、その人、口が悪くて、顔もイマイチで、性格なんて最悪で、本当にイヤな奴なんだよ」 「……は?なんだそれ?サイテーじゃん」 「だけどね。私に……ずっと優しくしてくれたんだ。その人がいたから、私は元気になれたの。それに……、思い出したんだ。子供の頃の約束……」 「約束……!?」 「お兄ちゃんが卒園して、幼稚園に行きたくなくて泣いていたら、その子が言ったの……。私、今まで勘違いしてたんだ。お兄ちゃんが私に言ってくれたと思っていたけど、違ったんだ……」 「……真琴」 「その子がね。『ずっと俺が真琴を守るよ』って……」
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