【2】涙色

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 あいつ……学校に行くかな?  ドアが開き、おばさんが玄関に立っていた。 「……おはようございます。やっぱりダメでした。明日……また来ます」 「海ちゃん、おはよう。真琴、いつまで髪の毛いじってるの。遅刻するわよ」 「……えっ?髪の毛……?」  リビングから髪をいじりながら、真琴が出てきた。ちゃんと制服を着て、俺に視線を向け俯き加減で微笑んだ。 「真琴!おはよう!」 「お……はよう…」 「おばさん、行ってきます」 「海ちゃん、宜しくね。真琴、行ってらっしゃい」 「……うん。行って……きます」  俺達は深い悲しみを心の中に抱いてる。  同じ辛さと……  同じ寂しさを……  心の中に……抱いてる。  でも、大丈夫だよ。  俺がずっと傍にいるから。 「海渡、気持ち……いいね」 「えっ?」 「朝、外に出るの久しぶりだから……。空が……青くて気持ちいい」 「一ヶ月も殻に引き隠るなんて、ありえねぇぞ!蝸牛や巻き貝でも地面を這ってんのに、何やってんだか」 「……だって、だって」  以前の真琴なら、『バーカ』って俺の頭をポカポカ殴るのに、真琴は涙ぐんでいる。 「こらっ!鼻垂らして泣くなよ!今から学校に行くんだかんな!ほら、自転車に乗れ」 「グスン、鼻垂らしてないし。海渡のバカ」  真琴が涙を拭った。 「俺が音楽室のピアノで猫ふんじゃった弾いてやるから」 「バカ、バカ、幼稚園児じゃないんだからね」  それでいい。  真琴……がんばれ……。  ◇  俺は空を見上げた。 「なぁ真琴、覚えてる?」 「なに?」 「俺が、子供の頃に言ったこと」 「なに?」 「いや、覚えてないならいいや。しっかり掴まってろよ」 「うん」  俺が幼稚園の時に、真琴と交わしたはじめての約束。  
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