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誰もいない音楽室。
カーテンの隙間から太陽の光が差し込む。
音楽室に流れるピアノのメロディー。
お兄ちゃんの長い指は鍵盤の上で、流れるように動いている。
なんて美しいのだろう……。
男子なのにこんなにも優しいメロディーを奏でることができるお兄ちゃんに、私は見とれている。
お兄ちゃんは私の幼なじみだ。
幼稚園の頃から知っている。
だから交際しているのに、未だに『お兄ちゃん』って、呼んでしまう。
だって、名前で呼ぶのはまだ恥ずかしいから。
カーテンの隙間から差し込む太陽のスポットライトを浴び、全身で美しいメロディーを奏でるお兄ちゃんは、京野陸(きょうのりく)、二歳年上の高校三年生。私は西田真琴(にしたまこと)、高校一年生だ。
お兄ちゃんは忘れているけど、私は覚えてるよ。
幼稚園の時に交わした約束。
――『ずっとおれがまことをまもるよ』
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